クラレンス・ナッシュの類稀なる声の演技が、ドナルドの沸騰する怒りを芸術の域まで高めています。本作の白眉は、無数の蟻たちが一糸乱れぬ規律で動く集団の美と、それに対峙するドナルドの個の限界の対比です。流麗なアニメーションによって描かれる蟻たちの擬人化された知略は、単なるドタバタ劇を超えた軍隊的なリズムと様式美を作品に与えています。
自然の驚異を滑稽に描きつつ、個人の独占欲や慢心が小さな存在の連帯によって覆されるカタルシスこそが本作の本質です。整然とした蟻の行進がもたらす視覚的快感と、ドナルドが絶望へと追い込まれていく計算し尽くされた演出の妙。それは自然界の団結力に対する一種の敬畏すら感じさせる、ブラックユーモアに満ちた至高のエンターテインメントと言えるでしょう。