トム・ハーディの圧倒的な肉体性と静謐な狂気が、十九世紀初頭の泥に塗れたロンドンを支配しています。本作の魅力は、歴史劇の枠組みを借りながら、人間の深淵に潜む呪術的な野性を剥き出しにする独創的な演出にあります。陰惨なリアリズムと幻想的な映像美が、観る者の倫理観を静かに侵食していく快感は、唯一無二のものです。
東インド会社という巨大組織に抗う男を通じ、作品は文明の裏の汚濁と血族の宿命を突きつけます。実力派キャストが織りなす重厚な群像劇は、沈黙さえもが物語を語るほどの緊迫感に満ちています。正義や悪を超え、本能のみが駆動する究極の人間ドラマに、魂が激しく揺さぶられるでしょう。