一九五四年に製作された本作は、後の映像化作品とは一線を画す、軽妙で人間味に溢れたホームズ像を確立した稀有なシリーズです。ロナルド・ハワード演じるホームズは、偏屈な天才というよりは知的な冒険家としての輝きを放ち、ハワード・マリオン=クロフォードが演じるエネルギッシュなワトソンとの対等な相棒関係が、物語に心地よいリズムと温かみを与えています。
原作であるコナン・ドイルの短編小説を基にしながらも、三十分という枠内で事件の核心を鮮やかに切り取る構成は、映像メディアならではの瞬発力と言えるでしょう。重厚なミステリーの枠を超え、軽快なやり取りの中で謎が解き明かされる洗練された演出は、活字では味わえないエンターテインメントの真髄を教えてくれます。クラシックな品格を保ちつつ、現代にも通じる普遍的なバディの魅力を放つ珠玉の連作です。