かつての「地上最強の男」が過去のイメージを自ら解体し、シュールな世界に身を投じる潔さが本作の真髄です。70年代の探偵アニメへのオマージュを捧げつつ、予測不能なカオスとブラックユーモアが全編を貫きます。タイソンの朴訥とした語り口が非日常的な状況と絶妙な違和感を生み、観る者を未知の笑いへと誘います。
ノーム・マクドナルド演じる毒舌なハトとの掛け合いは、研ぎ澄まされたコメディの瞬発力に満ちています。既存のジャンルを鮮やかに裏切る演出の妙。理屈を超えた「おかしみ」の向こう側に、伝説のボクサーの剥き出しの人間味と、映像表現が持つ自由な精神が激しく脈打っている傑作です。