アガサ・クリスティの不朽の名作をフランス流の洒脱な解釈で再構築した本作の魅力は、七〇年代を再現した鮮烈な色彩感覚と、型破りなキャラクター造形にあります。厳格な原作の枠組みを大胆に解体し、スタイリッシュなファッションやポップな映像美へと昇華させた演出は、古典的な推理劇を極上のエンターテインメントへと変貌させました。
文字で描かれた緻密なトリックはそのままに、映像ならではの強みとして三人の個性がぶつかり合う群像劇の面白さが際立ちます。原作の静謐な緊張感とは対照的に、エネルギッシュな皮肉とユーモアが全編を彩り、社会におけるジェンダー観の変化といった現代的な視点も鋭く織り交ぜられています。物語の核を損なわずに換骨奪胎した、映像表現の勝利と言える一作です。