本作の最大の魅力は、至高の権力に手をかけた女性が辿る、壮絶なまでの魂の変遷にあります。特に主演のヌルギュル・イェシルチャイが見せる重厚な演技は圧巻で、慈愛に満ちた母としての顔と、国家を維持するために冷酷な決断を下す統治者としての顔、その矛盾に引き裂かれる内面を見事に体現しています。
オスマン帝国という豪華絢爛な舞台装置の中で繰り広げられるのは、愛と執着、そして避けることのできない世代交代の悲劇です。単なる歴史劇の枠を超え、権力が人間の高潔さをいかに蝕み、それでもなお守るべきもののために修羅の道を進む女帝の生き様は、観る者の心に深い余韻を残します。映像美と心理戦が織りなす究極の人間ドラマと言えるでしょう。