平凡な日常が宝くじの当選という狂気で瓦解する様を、戸田恵梨香が驚異の解像度で体現しています。彼女の瞳が絶望に濁っていく繊細な変化は、観客の心を激しく揺さぶります。高良健吾や柄本佑が放つ静かな執着も相まって、全編に漂う息詰まるようなサスペンスと、極限まで研ぎ澄まされた孤独の演出は圧巻の一言です。
本作が描くのは、幸運という名の呪いに翻弄される人間の本質的な脆さです。嘘が嘘を呼び、逃れられない破滅へと突き進む過程に、抗いがたい美しさと恐怖が同居しています。映像表現でしか成し得ない粘着質なリアリティと、虚飾を剥ぎ取っていく容赦ない視線は、観る者に「幸福の正体」を鋭く問いかけます。