ヒーローではない「得体の知れない存在」としての鬼太郎が放つ、冷徹で不気味な佇まいに圧倒されます。昭和の混沌とした空気感を見事に再現した色彩と、野沢雅子による感情を排した名演は、親しみやすさを削ぎ落とした純粋な怪異としての恐怖を突きつけ、観る者を一瞬にして闇の世界へと引き摺り込みます。
本作の本質は、妖怪以上に欲望にまみれた人間たちの醜悪さを冷ややかに炙り出す点にあります。勧善懲悪の枠組みを覆し、人間の業を冷酷に描く演出は、視聴者の倫理観を激しく揺さぶります。おどろおどろしい映像美と音楽が交差する独特の退廃美は、大人のための至高の怪奇幻想劇と言えるでしょう。