本作の真髄は、言葉にならない感情の機微を、淡い水彩画のような色彩と静謐な演出で掬い上げた点にあります。思春期の揺らぎや、憧憬と自己の間で葛藤する少女たちを詩的に描き出す手腕は見事です。透明感溢れる映像美は、観る者の記憶にある純粋なノスタルジーを鮮烈に呼び覚まします。
志村貴子の原作が持つ繊細さを、映像特有の「間」と「音」で見事に拡張した点も白眉です。声優陣の抑えた演技と情緒豊かな劇伴が共鳴し、紙面では描けない「空気の震え」を体現しました。原作の気品を尊重しつつ、映像表現でしか到達し得ない叙情的な深淵へと誘う、至高の文芸アニメーションです。