あらすじ
時は江戸時代初頭、天下太平の世の中。駿河大納言・徳川忠長の命により、通常は木剣によって行われるべき御前試合が、真剣をもって行われようとしていた。この御前試合で対決する、藤木源之助と伊良子清玄。藤木は片腕を失い、伊良子は盲目であった。この二人は、不世出の剣士とうたわれた岩本虎眼の道場でのかつての同門。異様な構えを取る伊良子…。二人が出会い頭角を現し、虎眼道場の跡継ぎとして目指す武士道の頂点。しかしその頂点に立てるものは一人しかいない。この二人の葛藤を縦軸に、数奇な運命を横軸に、織り上げた運命の物語。
作品考察・見どころ
本作は、武士道という名の狂気を、極限まで研ぎ澄まされた映像美で描き出した残酷かつ耽美な傑作です。静寂が支配する画面から漂う死の匂い。濱崎博嗣監督による執拗な肉体描写と「間」の演出は、観る者の神経を逆撫でし、剣に憑りつかれた男たちの凄絶な業を浮き彫りにします。
原作の緻密な劇画に対し、アニメ版は色調を抑えた色彩と環境音の強調により、静謐な狂気をより重層的に表現しました。浪川大輔と佐々木望による、感情を押し殺した剥き出しの演技が、紙面を超えた内なる虚無と執念を完璧に補完しています。これぞ映像でしか到達し得ない、魂を削るような剣客文学の極致です。