トニー・レオンが一人二役で見せる驚異的な演じ分けこそ、本作最大の白眉です。純真無垢な弟と狡猾な兄という対極の個性を表情一つで描き分ける彼の演技は、後年の名優としての片鱗を強く感じさせます。軽妙なコメディと武侠劇の重厚さが織りなす緩急は、観る者を飽きさせない中毒的な魅力を放っています。
金庸の原作を基に、映像化でコメディ色を大胆に強めた演出が光ります。活字では追いきれない双子の掛け合いを、同一画面内の絶妙な間合いで具現化した点は、映像メディアならではの勝利です。原作の数奇な運命論を継承しつつ、俳優の多才さを極限まで引き出したエンタメの傑作と言えるでしょう。