アイスランドの荒涼とした風景が、主人公の孤独と見事に共鳴する本作の白眉は、レナ・オリンの凄絶な演技にあります。定年を目前に控えた刑事の焦燥と、氷河のように静かに、しかし確実に心を侵食する過去の傷痕。彼女の眼差し一つで、言葉以上に重厚なミステリーが語られており、観る者はその冷徹なまでの美しさに圧倒されるはずです。
単なる犯人探しに留まらず、社会から忘れ去られようとする者の尊厳や、静かに積み重なる不条理を鋭く描き出す演出は圧巻です。北欧特有の仄暗い色彩設計と、どこまでも続く沈黙の映像美が、人間の心の深淵を浮き彫りにしています。一度足を踏み入れれば抜け出せない、極上の心理サスペンスを体験させてくれる稀有な一作です。