ミシェル・コンスタンタンという稀代の強面俳優が、時にコミカルで時に哀愁漂う人物像を演じ抜く本作の魅力は、その絶妙な温度感にあります。アンドレ・プッスら名優たちとの掛け合いから生まれる軽妙な洒脱さと、硬派な犯罪ドラマとしての緊張感が同居する世界観は、単なる娯楽作の枠を超えた深い人間味を放っています。
冷徹な事件の裏側に潜む可笑しみや切なさを、映像ならではの叙情的な空気感で描き出す演出は実に見事です。言葉に頼りすぎず、役者の眼差しや佇まいで真実を語らせる手法は、観る者の想像力を強く刺激します。正義と悪の境界線で揺れ動く人間模様を、洗練された大人のユーモアで包み込んだ、今こそ再評価されるべき芳醇な作品です。