1970年版の本作は、ボクシングを通じた自己破壊的なまでの生への渇望を描き切った伝説的作品です。出崎統監督による「ハーモニー」と呼ばれる静止画演出や劇的な陰影は、戦いの中にしか居場所のない孤独な魂の震えを鮮烈に視覚化しました。あおい輝彦が吹き込んだ剥き出しの声は、矢吹丈という存在に圧倒的な実存感を与えています。
原作劇画の重厚な筆致を、アニメ特有の間と色彩で昇華させた点も見事です。漫画では表現し得ない「静寂の緊張感」や孤独な風の音を映像で巧みに補完し、宿命のライバル・力石との死闘を神話の域まで高めました。時代の閉塞感を打ち破ろうとする狂気的な情熱は、半世紀を経た今も観る者の魂を激しく焦がし続けます。