タクシーという閉鎖空間で見取り図の二人が見せる、フィクションとリアリティの境界線が本作の最大の魅力です。盛山晋太郎の情感豊かな熱量と、リリーの飄々とした佇まいが織りなす化学反応は、まるで計算し尽くされた即興劇のような緊張感と心地よさを同時に与えてくれます。
寄り道という言葉に込められた、効率を求める現代社会へのアンチテーゼが胸を打ちます。無駄の中にこそ人生の豊かさが宿ることを、二人の言葉の応酬と流れる車窓の景色が雄弁に語りかけます。日常の延長線上にあるドラマ性を、彼らの圧倒的な存在感を通じて再発見できる、映像美に満ちた意欲作です。