かつてロックスターだった男は、アルコール依存症のせいで記憶が不安定になり、家族との関係も破綻していた。そんな中、男は姿を消した息子を見つけ出すべく、死に物狂いで行方を追い始める。
アルカディウシュ・ヤクビクによる、魂を削るような圧巻の演技が本作の白眉です。依存症という「記憶の霧」に囚われた男の執着と絶望を、彼は極めて生々しく体現しました。歪んだ記憶の断片を辿り、真実と虚構が混濁する深淵へ誘う没入感は、観る者の倫理観を激しく揺さぶります。 ヤクブ・ジュルチックの原作が持つ重厚な筆致を、映像特有の冷徹なトーンで見事に昇華しています。文字以上に雄弁な「沈黙」が、負の連鎖に抗う人間の脆さを浮き彫りにし、自己の罪と向き合う痛みを突きつけます。救済の可能性を問いかける鋭いメッセージは、鑑賞後も長く心に突き刺さるはずです。
監督・制作: Kacper Wysocki
脚本: Kacper Wysocki / Jakub Żulczyk
音楽: Olaf Deriglasoff
制作会社: Opus TV