英国流の諧謔精神が凝縮された本作の真髄は、没落の危機にありながらも貴族としての矜持を滑稽なまでに守り抜こうとする、人間の可笑しさと愛おしさにあります。チャールズ・グレイの重厚かつ軽妙な語り口と、マーガレット・レイトンが放つ圧倒的な気品が、世俗的な貧窮という現実を極上のコメディへと昇華させている点は見事と言うほかありません。
単なる階級社会への風刺に留まらず、変わりゆく時代の中で何を重んじて生きるかという普遍的なメッセージが、洗練された会話劇の端々に息づいています。ララ・ウォードが添える瑞々しい感性と、虚飾と真実が鮮やかに交錯する演出の妙は、今なお観る者の審美眼を刺激し、知的な興奮を与えてくれる至高の映像体験となるでしょう。