巨額の信託基金を持つ犬というだけでも驚きだが、さらに奇妙なのはこの犬の管理人。それは、カルトまがいの取り巻きを従え、贅沢(ぜいたく)な生活を送るエキセントリックな男性だった。
本作の本質的な魅力は、莫大な富を相続した犬という寓話的な設定を入り口に、人間の底知れぬ欲望と孤独、そして共同体の狂気を暴き出す重層的な構造にあります。富によって歪められた人間関係と、理想郷を追い求めるがゆえの倒錯を描いた本作は、一見華やかな奇談の裏側に潜む、極めて鋭利な人間ドラマを突きつけてきます。 演出面では、真実と虚構の境界を曖昧にする手法が見事です。登場人物たちの語り口からは、単なる奇行に留まらない切実な渇望が滲み出ており、視聴者を困惑と共感の狭間へと誘います。富がもたらすのは自由か、それとも支配か。現代社会における幸福の定義を根底から揺さぶる、あまりに美しくも歪な映像体験がここにあります。
音楽: Mike Schanzlin / Mike Griffin
制作会社: NOBO Productions