本作の核心は、宙吊りのアイデンティティを笑いと哀愁で包み込む圧倒的な構成力にあります。パレスチナ難民として米国で暮らす主人公の不安定な日常を、強烈な皮肉を込めたコメディとして描き出す手腕が見事です。国家という後ろ盾を持たない者の孤独と、それでも絶やさない家族の絆が、観る者の心に深く突き刺さります。
主演のムハンマド・アーメルによる、怒りと慈愛が混ざり合った熱演は圧巻です。文化の衝突や理不尽な社会構造を鮮烈に活写し、普遍的な人間賛歌へと昇華させています。自身の居場所を問うその姿に、誰もが魂を揺さぶられるはずです。今この時代にこそ観るべき、エネルギーに満ちた傑作といえるでしょう。