本作はアメリカンドリームの終焉が漂うデトロイトを舞台に、どん底に堕ちた男の再起を哀愁と皮肉を交えて描いた傑作です。最大の魅力は、現代社会における男性性の揺らぎや自己の再定義という重厚なテーマを、驚くほど軽やかに、かつ痛烈に描き出している点にあります。
主演のトーマス・ジェーンが見せる、逞しさと繊細さが同居した演技は圧巻です。彼が体現する「持たざる者」の泥臭い足掻きは、観る者の胸を熱くさせます。映像美と脚本のキレが融合し、人間の尊厳とは何かを問いかける本作は、人生の袋小路に迷い込んだ大人たちにこそ捧げるべき、最高の人間讃歌です。