ポール・ギルバートの軽妙洒脱な身のこなしこそが本作の白眉です。粗野なボクサーから洗練された紳士へと変貌を遂げようとする主人公の「ズレ」が生むユーモアは、単なるドタバタ劇に留まらない品格があります。フィリス・コーツらの実力派が脇を固めることで、コメディとしてのリズムと熱量が極限まで高められています。
本作の本質は、自己の再定義という普遍的な挑戦にあります。過去を否定せず、新しい環境でいかに自分らしく輝くかというテーマが、映像ならではの細やかな表情や洗練されたセリフ回しを通して綴られます。時代を超えて観る者の心を軽やかに揺さぶり、明日への活力を与えてくれる珠玉の一作です。