ソ連版ホームズの金字塔である本作は、ヴィクトリア朝の終焉と新たな時代の足音を見事に描き出しています。ワシーリー・リヴァノフが体現する知的な風格と、ヴィタリー・ソロミンの温かみある献身が織りなす究極の信頼関係は、単なる事件解決を超えた人生の哀愁を漂わせます。二人の間に流れる静かな空気感こそが、本作の持つ最大の魔法です。
原作のスパイ小説的な趣を保ちつつも、映像化によって「時代に取り残される英雄」という切なさが強調されています。活字では語り尽くせない、引退後のホームズが見せる寂寥感や、迫りくる戦争の影を捉えた重厚な演出は、テレビ映画の枠を超えた芸術性へと昇華されました。古典への深い愛と独自の美学が結実した、まさにシリーズの集大成と言える逸品です。