アジズ・ダダスとファティマ・ハイルという二人の名優が、この家族ドラマに比類なき重厚さと説得力を与えています。特に、それまでのキャリアを裏切るようなダダスの繊細な感情表現と、ハイルの気品溢れる静謐な佇まいのコントラストは、単なる愛憎劇の枠を超えた人間ドラマの真髄を私たちに突きつけます。
本作の真の魅力は、血縁という逃れられない絆の中に潜む野心と、無償の愛の葛藤を鋭く切り取った点にあります。モロッコの現代社会を背景に、世代間の断絶や秘密がもたらす波紋を、息を呑むような心理描写で描き切る演出は圧巻です。家族という最小単位の組織を通じて、人間の尊厳と許しの本質を問い直す、情熱に満ちた傑作と言えるでしょう。