あらすじ
「君の笑った顔、虫の裏側に似てるよね。カナブンとかの裏側みたい」当時、高校で1番かわいい女の子からそう言われた小野浩史(賀来賢人)は、この日を境にうまく笑えなくなった─。
母親には幼くして捨てられ、初恋の相手は自転車泥棒。
女性に様々なトラウマを抱えた浩史が、橋本アスカ(山本舞香)と出会ったのは、音楽系のチャットルームだった。アスカが入室してくるたびに高揚する浩史の気持ち。
初めて直接彼女と出会った時、アスカは変態に”唾を売って”生活していた…。
その日から、人生最愛の彼女との最高で最低の6年間が始まった─。
作品考察・見どころ
本作は、無様で泥臭い人生の断片を、圧倒的なリアリズムとユーモアで肯定する至高の人間讃歌です。主演の賀来賢人が見せる、情けなくも愛おしい「静」の演技と、山本舞香が放つ壊れそうなほど鋭い「動」のエネルギー。この二人がぶつかり合うことで生まれる火花は、単なる恋愛ドラマの枠を超え、観る者の孤独に深く寄り添い、魂を揺さぶります。
原作の持つ私小説的なモノローグの美しさを継承しつつ、実写化によって「体温」と「痛み」が鮮明に肉付けされました。映像ならではの空気感や役者の息遣いが、活字では捉えきれなかった切実な瞬間を見事に具現化しています。最低な夜があるからこそ、不格好な生が輝きを放つ。その矛盾に満ちた救いを描き切った、紛れもない傑作です。