まだ封建的であった20世紀初頭のイギリス。良家の令嬢ルーシーは、旅先のフィレンツェで労働者階級の青年と出会う。情熱的な彼にルーシーは強く惹かれるが……。格調高い様式美の中で綴られるラヴ・ロマンス。
本作の魅力は、厳格な社交慣習と迸る情熱の鮮烈な対比にあります。イタリアの眩い陽光と英国の静謐な田園風景は、抑圧された内面を解放する装置として機能し、ヘレナ・ボナム=カーターとマギー・スミスが魅せる静かなる葛藤と高揚は、観る者の心を激しく揺さぶります。 フォースターの原作が持つ知的な風刺に対し、映像化では視覚的な豊饒さが加わり、物語に圧倒的な生命力を吹き込みました。眺めの美しさが心の自由の象徴へと昇華されるカタルシスは、映像表現でしか到達し得ない領域です。伝統を脱ぎ捨て、真実の自分を勝ち取る気高さをこれほど優雅に肯定した傑作はありません。
脚本: ルース・プラワー・ジャブヴァーラ / E.M. Forster
音楽: Richard Robbins
制作会社: Curzon Film Distributors / Goldcrest / National Film Finance Corporation (NFFC) / Film4 Productions