多くの矛盾と変革のエネルギーが渦巻く幕末の混乱の時代、ひとつの時代の終わりを見届けた最後の将軍・徳川慶喜。江戸庶民や下級武士の生活を織り交ぜながら、国を背負い、命がけで時代と格闘した慶喜の苦悩と葛藤の半生を描いた。
この作品の真髄は、幕末という激動の時代を「敗北の美学」という独自の視点から再定義した点にあります。徳川慶喜という、類まれなる智略を持ちながらも自ら幕を下ろした孤独な指導者の内面を、重厚な筆致で描き出しています。単なる歴史劇の枠を超え、組織と個人の葛藤を鋭く突く人間ドラマとしての強度が、見る者の心を激しく揺さぶります。 江守徹をはじめとする実力派キャストが放つ、一瞬の隙も許さない圧倒的な熱量も見逃せません。緊迫感あふれる対峙シーンでの静寂や、言葉の裏に隠された苦悩、そして時代の荒波に呑まれながらも気高さを失わない立ち振る舞い。映像ならではの繊細な表情の変化が、複雑な感情の機微を鮮烈に伝え、観客を明治維新の裏側に潜む真実へと誘います。
監督・制作: 司馬遼太郎
脚本: 田向正健
音楽: 湯浅譲二
制作会社: NHK