この作品の真髄は、法の限界に挑む父の執念という、純粋で狂気をも孕んだ人間ドラマにあります。静謐な語りの中に煮えたぎるような怒りと悲しみが同居し、観る者の倫理観を激しく揺さぶります。正義とは何かという問いを、単なる事件記録を超えた一級のドキュメンタリーとして提示している点が最大の魅力です。
映像の白眉は、数十年にわたる歳月を克明に刻み込んだ構成力です。時を経てなお衰えない父の瞳が、国境という厚い壁を突き崩していく様は、フィクションを凌駕する緊迫感を放っています。一人の男の孤独な闘いが社会の矛盾を露わにするプロセスは圧巻で、鑑賞後も消えない深い余韻を約束します。