本作が単なる動物パニック映画の枠を超えて語り継がれる理由は、人食いザメを単なる恐怖の対象としてではなく、守るべき同胞として描くという、時代を先取りした視点の転換にあります。主演のリチャード・ジャッケルが見せる、社会を拒絶しサメと魂を通わせる男の狂気と純粋さは圧巻です。彼が体現する「自然との過激な共生」は、観客に強烈な違和感と、奇妙な共感すら覚えさせる哲学的な深みを与えています。
映像面では、実物のサメが放つ生々しい迫力が、剥き出しの自然の威厳を突きつけます。人間の強欲さが引き起こす悲劇を冷徹に見つめる演出は、エコロジーが叫ばれる現代にこそより重く響くでしょう。血湧き肉躍る復讐劇のスリルの中に、行き過ぎた人間中心主義への痛烈な批判が込められた、極めて情熱的でエモーショナルな海洋スリラーの異色作です。