吉田喜重監督が放つ冷徹な美学が、都会の虚無感を見事に切り取っています。愛と打算が交錯する欲望の果てに待ち受ける空虚さを描いた本作は、松竹ヌーベルバーグの旗手としての鋭利な感性が光ります。計算し尽くされた構図と光と影のコントラストが、登場人物たちの心の渇きを饒舌に語り、観る者を映像の迷宮へと誘います。
瑳峨三智子の妖艶な存在感と、若き津川雅彦が放つ冷ややかな野心の火花は圧巻です。現代社会における個人の孤独や疎外感といった普遍的なテーマを突きつける本作の眼差しは、公開から時を経てもなお、私たちの魂を激しく揺さぶる先鋭的な力を失っていません。