内田吐夢監督が描く本作の真髄は、泰平の東海道を舞台に、身分制度という残酷な軛を苛烈に炙り出した点にあります。片岡千恵蔵が従来のスター性を脱ぎ捨て、泥にまみれ忠義を爆発させるクライマックスは、日本映画史に刻まれるべき壮絶な輝きを放っています。
槍の一振りに込められたのは、形式美を超えた抑圧された魂の咆哮です。美しい富士を背に繰り広げられる血みどろの死闘は、封建社会の矛盾を突きつけ、観る者の倫理を激しく揺さぶります。道中記ののどかさが一転して地獄へと変貌する構成の妙と、剥き出しの人間愛に魂が震える傑作です。