ホラーとコメディの境界線を軽やかに飛び越える本作の最大の魅力は、死してなお愛を貫こうとする滑稽さと切なさが同居する独特の空気感にあります。愛する人がゾンビ化するという極限状態を、悲劇ではなく日常の延長線上にある「恋愛の不具合」として描く視点が非常に斬新で、観る者の倫理観を心地よく揺さぶってきます。
マライエ・デルフィノの献身的ながらもどこか狂気を孕んだ演技と、言葉を失いながらも異様な存在感を放つイアン・アルダの掛け合いは絶妙です。これは単なるジャンル映画ではなく、欠点や変化さえも受け入れる無条件の愛の危うさと尊さを問いかける、現代的な寓話と言えるでしょう。グロテスクな描写の裏に隠された、あまりに純粋で歪な愛情表現に、誰もが自身の恋愛観を投影せずにはいられません。