成瀬巳喜男監督の初期の最高傑作として名高い本作は、一九三五年の作品とは思えないほど鮮烈なリアリズムと洗練されたモダニズムが息づいています。都会的な乾いた空気感の中に、人間の滑稽さと切なさを凝縮した演出は、まさに映画芸術の極致と言えるでしょう。
千葉早智子が演じる闊達なヒロインは、旧来の価値観を軽やかに飛び越え、観る者に鮮やかな解放感を与えます。緻密な編集と大胆な接写が、言葉にならない心の機微を浮き彫りにし、複雑な家族の絆を多層的に描き出しています。時代を超えて人間の真理を突いた、芳醇な人間ドラマの傑作です。