ケネス・モア演じる、あらゆる苦痛に動じない無敵の体質を持つ男の姿は、宇宙開発に沸く時代の狂騒を鮮やかに皮肉る究極の風刺として機能しています。周囲が効率に奔走する中で放たれる彼の圧倒的な人間味と、淡々とした立ち振る舞いから生まれる洗練されたブリティッシュ・コメディの真髄は、観る者の知的好奇心を心地よく刺激して止みません。
技術至上主義への鋭い批評を内包しつつ、ロマンスが物語に温かな血を通わせている点も白眉です。完璧な検体として扱われる主人公が、愛という予測不能な感情を通じて人間性を再獲得していく過程は、映像ならではの情感に満ちています。進化の影で失われがちな心のゆとりを、軽妙かつ情熱的に再発見させてくれる稀有な一作と言えるでしょう。