篠田正浩監督が放つ、復讐と贖罪が入り混じるモノクロームの極致です。絶海の孤島を舞台に、人間の根源的な暴力性と孤独がスクリーンから溢れ出します。三國連太郎の圧倒的な凄みと新田昌玄の虚無的な瞳が火花を散らす様は、観る者の倫理観を激しく揺さぶる深淵なドラマを構築しています。
武田泰淳の原作が持つ問いを、篠田は研ぎ澄まされた映像美へと昇華させました。活字では捉えきれない閉塞感や波音の威圧感は、映像でしか到達できない表現の極北です。暴力の連鎖に抗う人間の業を、肉体と沈黙で炙り出した本作は、今なお色褪せない衝撃を私たちに突きつけます。