本作は、美徳とされがちな武士道の闇を暴き出す、烈しい人間ドラマの極致です。忠義の名の下に個人の尊厳が蹂躙される過程を、今井正監督は冷徹なリアリズムで描写しました。封建社会の歪みが現代の組織論にまで繋がる呪縛として描かれる構成は、観る者の倫理観を揺さぶり、個の在り方を鋭く問い直させます。
萬屋錦之介が見せる七代にわたる熱演は圧巻です。狂気と絶望に染まる男たちの魂を驚異的な演じ分けで体現しており、その鬼気迫る表情は映像でしか成し得ない説得力を放っています。単なる時代劇を超えた普遍的な人間悲劇として、今なお強烈なインパクトを与える傑作です。