あらすじ
香港の鬼才ジョニー・トー監督が、世界経済危機を背景に、金への欲望から起こった事件に巻き込まれる人々の姿を描く金融サスペンス。妻からしつこく新しいマンションの購入を迫られていたチョン警部補は、仕事を理由にいつも話をそらしていたが、しびれを切らせた妻は夫に内緒で仮契約をしてしまう。銀行の金融商品営業担当のテレサは、成績をあげるため、客にリスクの高い投資信託商品を売りつける。気のいいヤクザのパンサーは、逮捕された兄貴分の保釈金を作るため、同郷の投資会社の社長ドラゴンに相談を持ちかける。そんな中、欧州債務危機で金融資産が下落する事態が発生し……。
作品考察・見どころ
ジョニー・トー監督が放つ本作は、金という実体のない怪物に翻弄される現代社会の狂気を鋭く射抜いた傑作です。極限の緊張感の中で、人間の業と運命が複雑に絡み合う構成は圧巻です。予測不能な事態が連鎖し、良心と欲望が激しく火花を散らす演出には、単なる犯罪劇を超えた冷徹な文明批評が宿っています。
名優ラウ・チンワンの不器用で誠実な演技が、歪んだ資本主義の残酷さを際立たせます。一瞬の選択が天国と地獄を分かつ不条理な世界観は、観る者の倫理観を激しく揺さぶるでしょう。金が価値の基準となった現代で失われゆく人間性への挽歌として、本作は強烈なメッセージを突きつけます。