あらすじ
福島の地方都市から東京に逃げてきた少年ハチは、違法薬物の運び屋をして生計を立てている。ある日、運び屋の仕事でトラブルを起こしたハチはボコボコにされ、渋谷のラブホテルの裏で倒れていたところ、ホテルの裏口からやってきた少女にポケットティッシュを渡される。彼女は、アイといった。アイはトラウマから声を出せなくなり、筆談でしか話せない。孤独な少年と少女は衝突しながらもやがて互いにとってかけがえのない存在となっていくが、二人の間にはある真実が隠されていた…。
作品考察・見どころ
渋谷の街が放つ冷徹なノイズと、その狭間でうごめく若者たちの焦燥感が、息苦しいほどのリアリズムで画面に焼き付けられています。本作の真髄は、言葉にならない絶望をスリラーという枠組みで可視化した演出にあり、都会の闇に飲み込まれそうな命の灯火を、執拗なまでのクローズアップで捉え続ける視座が秀逸です。
倉悠貴の内に秘めた静かな熱量と、見上愛が体現する壊れそうな強さは、孤独という名の刃で互いを繋ぎ止めるかのような痛切な美しさを放っています。なぜ人は傷つくと分かっていても衝動に突き動かされるのか。倫理や理屈を飛び越えた先にある生への純粋な叫びは、鑑賞者の魂を激しく揺さぶり、あまりにも鋭利な余韻を残します。