本作はアイデンティティの喪失という普遍的な恐怖を、即物的なメタファーを用いて鮮烈に描き出しています。主演のギャレット・W・ブッシュが見せる、虚栄心が剥がれ落ちていく過程の生々しさは圧巻です。自尊心を象徴するものを失った男の狼狽と、その先に待つ奇妙なカタルシスは、観客に対して「真の自己とは何か」を鋭く問いかけます。
不条理な状況をあえてシリアスに捉える演出は、喜劇と悲劇が表裏一体となった独自の緊張感を生んでいます。肉体的な欠落が心理的な解放へと繋がっていくプロセスは、映像表現ならではの身体的な説得力に満ちており、観る者の男性性や倫理観を根底から揺さぶる、極めて刺激的な一作と言えるでしょう。