本作の真髄は、長谷川一夫という不世出のスターが放つ、抗いがたい色香と変幻自在の演技力に集約されます。題名が示す「七変化」の通り、一人の役者が多様な顔を演じ分ける様は、単なる技術を超えた映画的魔法そのものです。月形龍之介との火花散る対峙が、銀幕ならではの圧倒的な緊張感と至高の娯楽性を生み出しています。
光と影を巧みに操る映像美も白眉です。運命に翻弄されながらも己の美学を貫く人々の生き様は、様式美の中に深い人間ドラマを内包しています。歴史の荒波を背景に、人間の業や矜持をこれほどまでに華麗かつ情熱的に描き出した本作は、視覚的な悦楽と魂の震えを同時にもたらす、時代劇黄金期の熱量を体現した一編といえるでしょう。