成瀬巳喜男監督が初期に放った本作は、サイレント映画の枠を超えた凄まじい視覚的雄弁さに満ちています。流麗なカメラワークと大胆な編集が、言葉以上に登場人物の孤独や情熱を饒舌に語り、一瞬の表情に宿る心理描写は観客の心を鋭く射抜きます。モダンな都市の風景と家庭劇という普遍的なテーマが交錯する圧倒的な映像美は、今なお鮮烈な輝きを放っています。
岡田嘉子をはじめとする名優たちの、抑制されつつも熱のこもった演技合戦も白眉です。血の繋がりを超えた情愛の真髄を問う本作のメッセージは、極限まで磨き上げられた演出によって、理屈ではなく魂に直接訴えかけてきます。愛憎が渦巻く中で見出される至高の献身は、観る者の倫理観を優しく、かつ激しく揺さぶり、時を超えて深い感動を呼び起こします。