フランス流の皮肉とウィットが炸裂する本作は、自己のアイデンティティと憧憬のズレを鮮やかに描き出しています。ティエリー・レルミットが見せる、アメリカンスタイルへの滑稽なまでの陶酔は、観客に自分とは何者かという本質的な問いを投げかけます。ステレオタイプを逆手に取った演出が、洗練された笑いへと昇華されている点が実に見事です。
若き実力派エミリー・ドゥケンヌとロラン・ドゥイッチが、レルミットの円熟した演技に瑞々しいリズムを与えています。記号化された幻影を追い求める滑稽さの中に、現代人が抱く帰属意識の揺らぎが透けて見える、情熱的で風刺の効いた傑作です。