神託により国の政策を決めていた卑弥呼は、たくましく成長して帰省した異母弟のタケヒコに欲望を燃え上がらせる。恋人のいる彼はためらうも、やがて卑弥呼を受け入れてしまう。これを知った国の長・オオキミは、卑弥呼の信託に疑問を抱くようになり…。
篠田正浩監督が放つ本作は、神託という絶対的な権威と抗えないエロスが激突する、極彩色の迷宮です。岩下志麻が体現する巫女の神々しさと、一人の女性としての凄絶な情念は、観る者の魂を震わせる圧倒的な迫力に満ちています。草刈正雄の瑞々しい肉体美と三國連太郎の重厚な演技が、この呪術的な世界観をより強固に支えています。 特筆すべきは、写実を排した舞台のような様式美です。暗闇に浮かぶ色彩設計と計算された身体技法は、映像でしか到達し得ない「原始の闇」を鮮烈に再構築しました。神話の虚構を生々しい人間の業へと昇華させた、日本映画史に残る前衛的な傑作です。
監督: 篠田正浩
脚本: 富岡多恵子 / 篠田正浩
音楽: 武満徹
制作: Masao Katô / 篠田正浩 / 葛井欣士郎
撮影監督: 鈴木達夫
制作会社: Art Theatre Guild / hyogensha