ジャン・ダニエル・ポレによる本作は、単なる紀行ドキュメンタリーの枠を超えた、純粋な視覚的詩作です。地中海を巡る断片的なイメージが、執拗なまでの反復編集と重厚な音楽によって、鑑賞者の意識を過去と現在、そして生と死が交差する神秘的な次元へと誘います。これほどまでに静謐でありながら、同時に鮮烈な衝撃を脳裏に刻み込む映像体験は他に類を見ません。
本作の本質は、時間の円環性を描き出したその独自の構成にあります。遺跡、闘牛、海といったイメージの断片が幾度も回帰することで、観客は場所の記録ではなく、文明の深淵そのものに触れるような感覚を覚えるでしょう。言葉では捉えきれない地中海の魂を、映像という言語のみで完璧に昇華させた、映画史に燦然と輝く至高の瞑想録といえます。