本作は、女子ボクシングの先駆者クリスティ・マーティンの栄光と、その裏側に潜む凄惨な地獄を浮き彫りにした魂のドキュメンタリーです。リング上の圧倒的な強さと、私生活での支配と暴力というあまりに残酷な対比が、見る者の胸を締め付けます。単なる成功譚ではなく、究極の生存の記録として描かれる演出は、スポーツドキュメンタリーの枠を超えた凄まじい緊張感に満ちています。
最も心揺さぶられるのは、彼女が最悪の事態から立ち上がる不屈の精神です。悪魔との契約という表題が示す通り、夢のために何を代償にしたのかを問うメッセージは重く、鋭い。彼女の瞳が語る真実と、当時の熱狂的な試合映像が織りなす重厚な物語性は、暴力に抗い、自己を取り戻そうとする一人の人間の気高さを見事に描き出しています。