富士の樹海という、死を想起させる重厚な舞台をあえて「喜劇」として描き出した点に、本作の比類なき凄みがあります。生と死が隣り合わせの極限状態においても、人間の営みにはどうしようもない滑稽さが宿る。その残酷さと愛おしさを、冷徹ながらも温かい映像美と共に突きつける演出は圧巻です。
新井康弘や遠藤久美子が体現する「普通の人々」の哀愁漂う演技が、絶望の淵に一筋の希望を灯しています。ドキュメンタリータッチのリアリズムが観る者の倫理観を激しく揺さぶり、不器用でも生き続けることを全肯定する力強いメッセージを放ちます。まさに、鑑賞者の魂を救済する一作と言えるでしょう。