アレクセイ・バラバノフ監督が描く、美しさと醜悪さが共存する退廃的な世界観こそが本作の真髄です。セピア調の映像は20世紀初頭を幻影のように映し出し、無声映画風の演出が観客の感覚を麻痺させます。人間の内面に潜む残酷な好奇心と、歪んだ美意識を暴き出す冷徹な眼差しには、抗いがたい魔力が宿っています。
主演セルゲイ・マコヴェツキーの怪演は圧巻で、冷酷な佇まいが異様な緊張感を生んでいます。支配関係が逆転する瞬間の衝撃は凄まじく、「怪物」とは誰かを問いかける本作は、観る者の倫理観を激しく揺さぶります。一度味わえば二度と忘れられない、美しくも猛毒を孕んだ至高の映像体験と言えるでしょう。