本作の真髄は、ジャクリーヌ・オドリー監督が描く「アイデンティティの華麗な戯れ」にあります。単なる歴史喜劇の枠を超え、性別という境界線を軽やかに飛び越える主人公の姿は、観る者に強烈な解放感を与えます。当時の貴族社会という窮屈な舞台装置を逆手に取った、虚実入り混じる演出の鮮やかさは、現代の視点で見ても驚くほど先鋭的で、洗練された美学に貫かれています。
アンドレ・ドバールの凛とした美しさと、ベルナール・ブリエが添える絶妙なユーモアの対比も見逃せません。内面から溢れ出す誇りと、社会的役割の狭間で揺れる人間性の機微を、豪華絢爛な映像美と共に描き切る手腕は見事です。本作は、個の真実が時代や形式を凌駕する瞬間を捉えた、自由を求める魂への情熱的な賛歌といえるでしょう。