本作が描き出すのは、言葉にできないほど繊細で、ひりつくような感情の揺らぎです。回りくどい歩みを選ばざるを得ない登場人物たちの葛藤が、雨の質感やソーダ水の泡のような儚い映像美と重なり、観る者の胸に深く沈み込みます。孤独を抱える魂が触れ合う瞬間の熱量を、静謐ながらも大胆な演出で捉え切った点に、本作の真髄があります。
主演の向理来をはじめとするキャスト陣は、視線一つにまで物語を宿した名演を披露しています。近道ができない不器用な愛の形は、現代を生きる私たちが忘れかけていた「誰かを想うことの痛みと救い」を鮮烈に思い出させてくれます。映像でしか表現し得ない濃密な空気感に、心ゆくまで溺れてほしい一作です。