本作の最大の妙味は、華やかな劇場の舞台裏に渦巻く人間の虚栄心と執着を、アンリ・ドコワン監督が冷徹かつ美しく切り出した演出力にあります。虚構と現実が交錯する閉鎖的な空間で、観客はいつの間にか登場人物たちが仕掛けた心理的な罠に囚われていく。光と影を巧みに操る映像美が、演劇界という特殊な世界の毒素を際立たせています。
特に若き日のジャンヌ・モローが放つ、抗いがたい魔性と純粋さが共存する佇まいは圧巻です。レイモン・ルローら実力派俳優たちとの火花散る演技合戦は、野心に憑りつかれた人間の業をまざまざと見せつけます。成功のために何を犠牲にするのか。その普遍的で残酷な問いが、半世紀以上の時を経てもなお、私たちの心を鋭く抉る傑作です。