イザベル・ユペールとジャン=ルイ・トランティニャンという、フランス映画界の至宝が火花を散らす極上の心理スリラーです。静謐な空気の中に潜む、鋭利な刃物のような緊張感がこの作品の真骨頂と言えるでしょう。一見すると平穏な日常の裏側に、どろりとした狂気と愛憎が静かに、しかし確実に満ちていく様を映し出す演出は、観る者の心拍数をじりじりと引き上げます。
表面的な静けさとは裏腹に、人間の底知れぬ業を描き出す冷徹な眼差しが圧巻です。抑圧された情念が「深い水」のように淀み、やがて取り返しのつかない破滅へと向かう美学には、抗いがたい魔力が宿っています。キャスト陣の抑制された演技が、言葉以上の饒舌さで人間の深淵をえぐり出し、鑑賞後も消えない冷ややかな余韻を残す、比類なき芸術的一作です。